嗅覚を刺激するニオイが
あちらからこちらからじんわり立ち昇ります。
冷たい雨が降りました。
街を上から下まですべからく濡らした雲が
去ったところです。
ボクの本能は水分に強化された数多の残り香を
嗅ぎたくてたまりません。
その熱意に報いてか呆れたのか
飼い主は地面を這うボクを自由にしてくれます。
そんなだから躾が中途半端になんですよ。
さて木材に水分が残っていても
石材やコンクリートはあっさり乾きました。
頭上では太陽が雲をかき分けて登場準備中。
ひとり歩きって
大きな事件は起きなくても
細かな発見がツモるんですよねえ。
あ、いや、だから
陽がさしてきたのでお腹をあたためておこう
とかしなくて良いですから。
わざわざ事件を起こさなくて結構ですから。
もうすぐみんな来ますってば。
ちょ、ちょっと離してください。