全ての車の音には反応すべきです。
確かに車が止まって誰かが降りてきたら
いくつかの隙間から鼻を入れてみて
いちばん深くまで頭が入る場所で構え
拙宅へ近づく人間を目視します。
目が合った先がお客様ではなく
通りすがりの道路工事のおじさんだったとしても
たいてい笑ってもらえるので
努力が無駄になることはありません。


いよいよ客人のカタチを確認するに至れば
背筋を伸ばして大地を踏みしめ
家犬として立派にお迎えする姿勢を取ります。
耳は、伏せます。
吠える無粋はしません。
尻尾は振れますが放っておきましょう。
さあ、もうじき門が開きます。
開いたら膝上を狙って助走なしの高飛びです。
準備万端。