一本ください。
飼い主の好物なんです、べったら。
浅めに漬かった大きいやつお願いします。
年に一度のべったら市と言えば
渋谷区恵比寿べったら市は後発にすぎませんが
出店が並び福引や太鼓や包丁研ぎまで繰り出すと
夕方には人混みで歩くのも難しくなります。
神社入り口でお漬物を売っているのは
築地から来たお店の皆さんでした。
コリコリする皮付きべったらを教えてくれたり
切り立ての試食品を食べさせてくれたり
スーツに帽子をキメたオジサンが遊んでくれたり
楽しいったらありません。
神様たちがいなくなる神無月に
居残ってボクたちを守ってくれるという
恵比寿様の縁日でべったら漬けを買えば
金運がつくと聞いた飼い主は
ほいほいと何本も買い込みました。
今週が誕生日の友人に送りつけるそうです。
嫌われても知りませんよ。
順番が逆な気もしますけれど
神社にもご挨拶を忘れずにかえりましょう。
どこからかお小遣いが降ってきますように。
ご挨拶の間、例によってボクは外で待ちます。
ひとりぼっちの時間は心細いですが
これから秋の中を一緒に歩いて帰れますから。
もうすぐ出てきますよ。
もうすぐ。