お婆ちゃんは
勇ましい中腰で「マテ」の指示を出しましたが
それを解除するための「OK」
という言葉を忘れてしまったところです。
しばらくお互いに動かず見合ったあと
お婆ちゃんはおもむろに手を出して
無言のままオヤツをくれました。
次にバキューンの手指示を見せながら
「フセ」のコマンドを繰り返し呟くので
とりあえずオスワリをしてみたら
オヤツをくれました。
今度は何の指示も出さずにオヤツを見せ
「OK」と言ってきたから
申し訳なくて勝手にバキューンしました。
遠慮なくオヤツはもらいます。
そんなお婆ちゃんは最近しばしば
ゴハンを途中で忘れたり
食後の薬を見失うため
ボクが食事中のお供をする担当です。
そうするとお婆ちゃんは話しかけてくるから
ぼんやり意識が飛ぶこともありません。
お婆ちゃんは来週
シセツという新居に引っ越します。
ご近所で便利で新しくて
ふかふかな布団と
優しいお姉さんたちに囲まれる
素敵な新生活の始まりですが
そこにボクは遊びに行けないそうです。
だから今は
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
お婆ちゃんの側にいるんです。